絵巻・やまと絵
巻物をひらくと、絵が時間を持ちはじめます。右から左へ手で繰るぶんだけ物語が進む——読む速さを読み手が決められる絵は、世界でも珍しいものでした。『源氏物語絵巻』(12世紀・国宝)には、屋根を取り払って室内を上から覗く「吹抜屋台」、貴族の顔を細い目とくの字の鼻で描く「引目鉤鼻」という約束事があります。『鳥獣人物戯画』(甲乙巻は12世紀中頃、丙丁巻は13世紀)の蛙と兎は、いまのマンガの誇張とまっすぐ地続きに見えます(作者を鳥羽僧正覚猷とする言い伝えがありますが、確証はありません)。中国の主題を描く「唐絵」に対して、日本の風景や物語を描く絵を「やまと絵」と呼び分けたのも、この時代です。この感覚はのちに琳派や浮世絵へ流れ込み、さらに遠く、MANGA MAPに描いたマンガの水脈へも届いていきます。