フォーヴィスム
空が緑でも、顔が赤でもいい。色を「見えたとおり」から解放し、感情の楽器にした画家たちです。1905年のサロン・ドートンヌで、批評家ルイ・ヴォークセルが彼らの部屋に置かれた古典的な彫刻を見て「野獣たちの中のドナテッロ」と書きました。これが「フォーヴ(野獣)」の由来です。もちろん褒めていません。活動期間はごく短いのに、その自由は以後のすべての絵に効いています。ちなみにこのヴォークセルという人は、3年後にもう一度やります。1908年、ブラックの絵を「キューブに還元している」と評して、キュビスムを名づけるのです(キュビスムへ)。20世紀でいちばん有名な様式名を二つとも、同じ批評家がけなしながらつくったことになります。そしてこの帯には、もうひとつ後日談があります。1937年、ナチス・ドイツが「退廃芸術」として名指しした様式の一覧に、フォーヴィスムの名前も入っていました。色を見たとおりから自由にしただけの5年間が、32年後に国家に指弾されたのです。自由な色というものは、思っているより強い意味を持ってしまうものらしい。