ゴシック美術
光を求めて天井は高くなり、壁は薄くなり、窓はステンドグラスになりました。起点とされるのは1140年ごろ、パリ近郊のサン・ドニ修道院。院長シュジェールは、物質の美しさが人の心を神へ運ぶと考えていたと言われます(この「光の神学」という読み解きは有力ですが、20世紀の美術史家による解釈であり、いまも議論が続いています)。そして名前です。「ゴシック」は、1550年にヴァザーリが「ゴート人の=野蛮な」という意味で使った言葉でした。ローマを略奪した蛮族の名を、この繊細な大聖堂になすりつけたのです。再評価されるまで、およそ300年かかりました。大聖堂を建てた石工も硝子職人も、ほとんどが名を残していません。名もなき手の最盛期です。