インドの美術
この地図の日本の帯へ流れ込む水は、たどればここから来ています。紀元前3世紀のアショーカ王が仏教を広め、5〜6世紀のグプタ朝で仏像は完成した姿になりました。マトゥラーとサールナートの仏像は、薄い衣が体に貼りつくように彫られていて、静けさそのものが形になっています。アジャンターの石窟は、前2世紀に掘りはじめられ、グプタ期にあの壁画が加わりました。南インドではチョーラ朝(9〜13世紀)が、踊るシヴァ=ナタラージャの青銅像を生みます。輪になった炎の中で、片脚を上げて宇宙の律動を踏む神。世界の彫刻史でも指折りの発明です。ひとつ、名前の話を。「ガンダーラ美術=ギリシャ仏教美術」という呼び方には、19世紀のイギリス人研究者たちがギリシャ由来を強調しすぎた跡が残っています。いまは「混ざり合ってできたもの」と見るのが主流で、インド側の創造をどれだけ認めるかは、書き直しの途中です。名前は、つけた人の立場を映します。