いまの日本の絵
いま日本でいちばん人とお金が動いている作家たちです。この帯を作るとき、最初は「路上から来た人たち」でまとめようとして、台帳に止められました。実際に路上のグラフィティから出てきたのはKYNEだけです。MADSAKIは、違法な路上の活動はしたことがないと本人が明言しています。ロッカクアヤコは無審査の公募展から、井田幸昌は東京藝術大学から、松山智一は経済学部を出てからニューヨークのデザインの大学院へ行きました。出発点はばらばらです。それでも共通していることはあります。美術の主流のルートのど真ん中ではないところから出てきて、2020年代に市場のほうが先に動いた——これは資料が並べて書いている事実です。KYNEは福岡で、限られた色数と輪郭線で女性を描きます。無表情に近い顔です。そして本人は顔を出しません。取材の写真では、いつも自分のイラストで顔を隠しています。この地図にはバンクシーがいますが、あちらは正体そのものが分からない人でした。こちらは、正体は分かっていて、顔だけ出さない。似ているようで、別の型です。ロッカクアヤコは筆を使いません。手で直接、ダンボールに描きます。段ボールは、はじめのころ東京の公園で集めていたそうです。井田幸昌は、出会った人を一度だけ描きます。同じ人にも同じ瞬間にも二度は会えない、という考えからです。松山智一は、江戸の絵とギリシャの彫刻とルネサンスとポップカルチャーを一枚に混ぜます。2020年、新宿駅東口の広場に彼の7メートルの彫刻が立ちました。