ルネサンス
千年前の古代を「学び直す」ことから、新しい美術が生まれました。始まりは、ひとつの実験装置です。1410年代のフィレンツェで、ブルネレスキは大聖堂の入口に立ち、向かいの洗礼堂を描いた小さな板に穴を開けました。裏から穴をのぞき、板の前に鏡を立てる。鏡を外すと本物の洗礼堂、鏡を戻すと絵の洗礼堂——どちらがどちらか分からない。奥行きは絵描きの勘ではなく作図できるものだと、彼はそうやって証明してみせました(実験の年は1413年説・1415年ごろ説・1425年ごろ説があり、定まっていません)。それが絵になったのは十数年後です。1427年ごろ、マサッチオがフィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂の壁に『聖三位一体』を描きました。壁のはずのところに、部屋の奥行きがぽっかり開いている。線遠近法をきちんと使った最初の絵とされています。そして1435年、アルベルティが『絵画論』でこの方法を言葉にしました。彼は絵をこう呼んでいます——「開いた窓」。画面は平らな板ではなく、向こう側がのぞける窓なのだ、と。ここが、この帯がいまへつながっている場所です。カメラも、3DのCGも、ゲームの画面も、一点に光を集めて平面に落とす中心投影という点でアルベルティの窓とまったく同じ仕組みで動いています。600年前に決められた奥行きの描き方の上に、いまの画面はほとんど全部が乗っているわけです。回帰は後ろ向きではなく、前へ進むための助走になる——この地図に何度も現れるパターンの、最初の大きな実例です。人の巡り合わせも書いておきます。レオナルドが1452年、ミケランジェロが1475年、ラファエロが1483年の生まれ。三人が同じ時代に、同じ半島にいました。ちなみに「ルネサンス」という呼び名も、19世紀の歴史家たちが広めたものだと言われています(諸説あります)。名前はいつも、後の時代がつけるようです。日本の「琳派」もそうでした。