シュルレアリスム
夢と無意識を、目が覚めたまま描く試みです。溶ける時計、空に浮かぶ岩。理屈では説明できないのに、なぜか懐かしい——人間の心の深い層に、絵で潜っていきました。この名前には、静かな由来があります。「シュルレアリスム」という言葉をつくったのは詩人のアポリネールで、1917年のことでした。彼は翌年に亡くなります。7年後の1924年、ブルトンは『シュルレアリスム宣言』を書くとき、亡き詩人のその言葉を受け継ぎました。悪口でもなく、自称でもない。手渡された名前です。ブルトンが宣言でうたった方法は「自動記述」——頭で考える前に手を動かし、心の働きをそのまま出すこと。広告や映画まで含めれば、20世紀でいちばん遠くまで届いた様式かもしれません。展覧会のつくり方まで作品にしてしまった人たちでもありました。1938年1月17日から2月24日まで、パリのボザール画廊でひらかれた国際シュルレアリスム展。会場の設計を任されたデュシャンは、天井から石炭袋を1200個ぶら下げました。初日は照明が働かず、来場者は懐中電灯を渡されて、暗がりの中で絵を探すことになります。絵を見る、というより、絵を探しに行く体験でした。最後に、日本での話を。この様式の名前は日本で「シュール」と短くなり、そのまま日常語になりました。ただ、意味のほうは変わっています。原語の sur- は「超えて」で、現実の向こうにもう一段ある現実、という意味あいでした。日本では1970年代に美術の言葉として使われはじめ、1990年代の終わりごろから「不条理」「ナンセンス」の意味で広まっていきます。この地図は「名前は後の時代がつける」という話を何度もしてきましたが、ここにもうひとつ型が増えました——名前は、海を渡った先で意味が変わることがあります。